2.7 開発委託契約書

 社団法人情報サービス産業協会(JISA)では、ソフトウェア開発委託契約書のモデル契約書を公表しておりますが、当事務所としては、これにはいくつかの不備があるものと考えており、独自のモデル契約書を用意しております。20年以上コンピュータソフトウェア開発に関わり、メーカの技術者として、外注契約に関わってきた経験から、検討を重ねてきたものです。
 このJISAモデル契約書に関しては、日経コンピュータ2004年12月27日号(以下「日経記事」)で、問題提起しておりますが、この問題提起も今ひとつ、開発現場の状況と乖離した部分もあり、十分ではありません。ただ、多くの部分は同意できるものです。
 当事務所のモデル契約書の全体は公開致しません。個別のご相談(有料)となりますが、当事務所で意識し、変更を加えている主な点について解説致します。

1.JISAモデル契約書の全体

 「単契約」か、「包括的契約+個々の契約」という形態が、ありますが、それぞれで若干の表現形式が異なる。当事務所では、それぞれに対応するモデル契約書を用意しております。
 また、JISAモデル契約書では、「仕様作成業務」と「開発業務」の2段になっておりますが、それぞれ分割した形態も用意しております。

 

2.JISAモデル契約書第1条に関して

 日経記事では、「共同作業の内容や責任の所在が明確でない」との指摘がありますが、これについては、モデル契約書として記述できる内容ではなく、個別の契約で明確にすべきものと考えます。ただし、一般的・共通的な記述が出来る範囲で、明確化は試みています。

3.JISAモデル契約書第2条に関して

 後に続く、条文における文言の意味の違いから、変更がなされています。

4.JISAモデル契約書第5条に関して

 日経記事で指摘してあるとおり、危険負担の発注者側への移転は、検収後と考えます。ただ、ソフトウェア開発における納入物はほとんど複製可能なものであることから、納入物の滅失などの「危険」はあまり想定しづらいです。

5.発注側、受注側の責任を明確化

 日経記事で指摘されているJISAモデル契約書第7条を含めて、発注側・受注側の責任が今ひとつ明確でない部分があります。当事務所のモデル契約書では、この点をかなり解消しているものと自負しております。(JISAモデル契約書第11条、12条、19条、20条、24条、32条

 

 

6.JISAモデル契約書第18条に関して

 再委託は、受注先の責任で自由に出来る方が良い。ただし、発注側としても、社会的道義的責任には配慮する必要があるので、全くの任意に再委託先を決められるというのも問題がある。

7.第三者ソフトウェアの利用に関して

 第三者ソフトウェアの利用に関して、いわゆる「商用ソフトウェア」と「フリーソフト」という区分けで、記述されているが、むしろ、「ライセンス契約が明確なもの」と「ライセンス契約が不明確なもの」という分類の方が、現状のフリーソフトウェア流通の実情に合うのではないでしょうか。

 当事務所のモデル契約書では、この辺を大幅に改訂してあります。

8.モデル契約書第23条に関して

 委託開発したソフトウェアの、運用・保守などを考えると、日経記事にあるように、プログラム以外の文書も検収項目に加えておくべきと考えます。ただし、文書の検収にはそれなりのコストがかかるのも事実ですので、個々の契約においては検討が必要でしょう。

9.秘密情報に関して

 業務上の秘密情報と、個人情報は別個に考え、「個人情報は関連法に従う」ことで十分と考えます。そう考えると、日経記事にあるような配慮は不要ではないでしょうか。(JISAモデル契約書第25条、26条関連)

 

10.著作権に関して

 プログラムの性質(パッケージ販売用、発注者社内利用、機器組み込み販売等)によって、著作権の帰属、利用権の内容などが異なる場合もあります。微妙な部分もあり、プログラムの利用形態などに対応した、いくつかのパターンを用意しております。

11.損害賠償に関して

 途中解約、損害賠償の上限額の設定、相当因果関係の範囲に限定する旨、責任期間などを明記しています。

12.セキュリティに関して

 JISAモデル契約書にも、日経記事にも、セキュリティ対策の対象の明確化には言及していませんが、対象によって、責任範囲、対策方法が異なるので、当事務所のモデル契約書では、この点について配慮しています。

13.契約解除に関して

 日経記事にあるとおり、契約解除の要件などを明確にしておく必要があります。この点、従来の日本の契約書は一般に「契約を履行する」ことには注意しますが、契約が順調に進まなかった場合のことがないがしろにされてきています。
 特に、順調にいかない場合にトラブルが発生するわけで、これを前もって冷静な状態の時に決めておくことによって、トラブルが効率的に解決されるものと考えます。

Top主頁
tatal count
Yahoo Top